トラブルで徹夜した。
朝帰りでベッドに倒れ込んで、どうにか起きあがった午後。
昭和38年(1963)に卒業した高校の還暦組同窓会に参加した。
41年間の時の流れが人の人生そのもので、
紅顔の青年たちがそれぞれに変化していた。
地金が磨かれたり、すり減ったり、ペイントされたり。
時の流れは非情だ。
すでに冥界に入ってしまった仲間も多いなか、
思いがけない出会いもあって。
アルコールが疲れ切った肉体にしみこんでいく。
シャイな男の思いも「いまならね」いえたんだろうけど、
みんないい人生をおくろうよ、ねえ。
甘酸っぱい記憶の向こうから、
いがらっぽい蚊取り線香の煙のようなオトナの人生ってのは。ん!
忘れてしまった事実や感動の記憶がよみがえり、
校歌も懐かしいが、「上を向いて歩こう」「高校3年生」を共に歌ったときには、
すでに、そのときに時は戻って輝いた。
見え始めた「今生の別れ」も過ぎ去った時よりも短い。「きっとね」
「たそかれは血色したゆふぐれ。明日など暗闇に放たれた銃弾」
そうだ、やはり漂泊の旅に出よう。
「フーテンの寅さん」か「小林旭」か・・・
雪駄でも馬でもない、我が愛車「ロシナンテⅢ」を転がして、
浪漫の人生の最後を旅で締めくくるのだ。
「その先は?」
「南の島で風に吹かれて・・・ハブに咬まれて死ぬんだ」
「・・・素敵ね!」「しびれるよね」
酔った脳裏に、ふと、沖縄に嫁いだ「愛する娘」の顔がほほえんでいた。
「沖縄においでよ、お父さん」
「ありがとう、おやすみ」